廃墟と無口な造形群

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廃墟の洗礼~土砂に埋もれたホテル~

date: 2013.10.01

category: 廃墟

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一年半ほど前の話である。

フラオンパクという「福島県いわき市の温泉旅館経営者や地元住民らが集まって楽しい住民レベルの地域おこしをする」というプロダクトで、解体予定の廃工場を見学するというイベントがあった。

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↑福島県田村市にある『住友大阪セメント株式会社田村工場』。その他の写真はこちらに収納済みポン→dear.フラオンパク

イベントに参加し、そこで初めて同じ趣味を持つ廃墟マニアと呼ばれる方々と知り合うことになった。
それまでたぬきの周りには「廃墟好き」なんて人はほんの少数しかいなかったので、結構な人数が集まっていたフラオンパクで、「ああ、この人たちはみんな廃墟が好きなんだポンね!」と思ったら妙に胸が高まってものすごく興奮したのを覚えている。

みなさんいろんな地方から訪れていて、まったくの初対面であるにも関わらず、「いいですねえ!聳え立つコンクリが最高にカッコイイですねえ!」などと普段絶対にできない会話を、深々共感し合いながらできることがうれしかった。

震災から1年が経過した年だったが、主宰者で田村市にお住まいの齋藤さんが「去年双葉で変なのが爆発しちゃいましたからねぇーはは」とちょっと冗談まじりに言っていたのが、なんだか妙に手触りがあったというか、ニュースで見るのとは違う現実、という感じがして胸に刻まれたこともある。

大好きでたまらなかったエンゲキを辞めて思い切ってカメラを買ったばかりだったので、このイベントには是非参加せねばきっと始まるものも始まらない!と思い、それまで遠路の一人旅などしたことのなかったこだぬきにとっては福島ってオイ!!という距離感ではあったが、思い切って新幹線の切符を買った。

そこで勇気を出して話しかけた方々とのご縁でこだぬき的廃墟ストーリーが始まったことを考えると、やっぱり行ってよかったなあ、と思っているのである。ポン。

・・・前置きすげぇ長くなっちまったポン・・・

いや、今回はこのことが書きたかったんじゃなくて、うんこの話が書きたかっただけなのである。(お食事中の方いらしたらゴメンナサイポン!!)

そんなきっかけで知り合った流れでできたお友達。廃墟マニアのやるお君と、廃墟ガールのかわいこちゃんひろしちゃんと、山梨県にある観光ホテルの廃墟を訪ねた時のお話だポン!

今以上に素人きわ立っていたこだぬきは、装備もままならない感じで、ペラペラのスニーカーにユニクロで急場しのぎに買ったサイズの合わないウインドブレーカー(これは今も使っている)といういでたちで、わくわくしながら現場に向かっていた。

やるおくんとひろしちゃんとお出かけするのも、これが2回目である。

なんでも30年くらい前に台風で土砂崩れした麓にあったホテルで、今もなだれを抑える形で土砂に埋もれて放置されてるということ。壮絶な歴史だポン・・・
今ならもう少しは頭が回るので、そんな埃っぽそうなところに行くのならマスクのひとつも持っていくのだが、そんな用意はなく。浅い靴底でガラスの破片なんかを踏まないように気をつけてよいしょよいしょとホテル内におじゃました。

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曲線美の廊下や、

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砂にまみれた椅子が集まる食堂。

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廃墟に誰かと一緒に行く場合、それぞれが思い思いに回って見たり写真を撮ったりするので、現地では大体個人行動になるポン。

こだぬきも一歩一歩、確かめるように歩いて回った。
写真についても、露出ってこうだよ、とか、シャッタスピードってこうだよ、ISO感度ってこういうことだよ、っていうのをたくさん教えていただいていたので、ちょっと丁寧に撮ってみよう、と思って回っていた時だった。

暗い部屋で三脚にカメラを据えてじっと秒を数えていると、ぐるり中のやるお君がうしろに現れた。

「なんかすごいねー。あちこちに、落ちてるね」
「そうポンねぇ。動物がやって来るポンかねえ」
「そうなんだろうねー」

と、あちこちに落ちているソレについて話をした。
長いシャッター開放時間が終わり、よいしょっと移動しようとした時ポン。やるお君がソレに気づいた。

「あッ!!!!こだぬきさん、う○こ踏んでるっ!!!!!!」

―!!!!!!!!!!

・・・である。
・・・であるポン。
ぺったりとう○この上でシャッタスピードを計っていたのだポン・・・。
いや、どのタイミングでう○こを踏んだのかはわからない。今ここでう○こを踏んだのか、ここに来るまでのどこかでう○こを踏んだのかはわからない。だけど、う○こを踏みながら真剣に構図や露出を考えていたことには変わりないのだポン。
生来たぬきのわりに鼻が悪いので、そのニオイも敏感に察することができず、のうのうとう○こを引き下げてうろうろとしていたことを思うと泣きたくなった。廃墟って怖いところなんだなと、改めて思い知った。その始めがコレだったかもしれない。

「こだぬきさん・・・臭ぇ・・・」

と、出会って2度目のフレッシュな関係のやるお君も声を押し殺して笑っている・・・。

よく注意して見ると、辺りには点々と(以下略)

***

ホテルの真裏に川が流れていたため、そっと岩場に立ってもくもくと足の裏を川の流れにゆだねた。そよそよと吹く風と、マスクをしていない鼻腔にダイレクトに流れ込むう○こ。いや、う○こ臭。 

車に戻ると、やるお君が常備品のウェットティッシュや、消毒液のようなものを持ち出して、なんとこだぬきのう○こを拭いてくれた。

・・・・語弊があるな。
こだぬきの靴底についたう○こを拭いてくれたポン。
川で洗ってきたとはいえ、やるお君の超紳士的にう○こを拭ってくれる姿を見て、人間の凄さを知る。人間ってあったかいポン。さっき笑っていたことは(う○こだけに)水に流すポン。

廃墟は自然に埋もれて素敵だとか、甘い、夢のようなことを大言していたから、自然とはこういうことだという洗礼を受けたのかもしれない。
たぬきに関わらず、注意深くそこまで歩いてきても三脚を持って構図を決める段階でモニターに夢中になって周りを確認せずに一歩下がったりというのは、とってしまいがちな危険な行動だ。今回はう○こで済んだが、それがコンクリートの床に空いた大きな穴だったりしたら、命を落とす可能性もある。う○こでよかった。危なかった。う○こはそれを教えてくれた。

それからは、不用意に足元を確認せずに移動したりすることは一切していない。こうやって立派な廃墟マニアになっていくのだろう。(いや、そもそも廃墟マニアという時点で立派ではないのだけどそれはさておきポン)
ガタゴトと悪路を突っ走るジムニーを運転するやるお君の後頭部からは《う○こを拭いてくれた人》という後光が射し続けていた。。

おわり


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