廃墟と無口な造形群

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【岩手県W発電所 02】命の選択

date: 2014.06.06

category: 廃墟

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初の遠征。SAでステーキを食べることもなく、目的地に向かってひた走ること5時間余り。ついに物件近くの細道に入っていったポン・・・!

▼前回の投稿
【岩手県W発電所 01プロローグ】旅の心得

先日先々日と、東北は豪雨だったらしい。
時は7月下旬。東京ではすっかり梅雨明けしカラッとした晴天が続いていたが、なんと東北は今まさに梅雨の真っ只中だったのだポン・・・・・・

「盲点だった」

廃墟行のパイセンはうなだれた。

「まぁまぁ、今日はギリギリ晴れてるポン、よいではないですポンか」

パイセン「黙れたぬき」

「ごめんなさい」

パイセンはそう言うと(本当は言ってないポン)車窓から見える川の流れを難しい顔付きで覗き込んだ。
今回の目的地は、その川をじゃぶじゃぶと渡って攻める先にあるのだが、昨日一昨日の豪雨で川は増水し、激流と化していた。

「こ、これは・・・渡れないポン・・・死ぬポン・・・」

とたぬきごときが判断するまでもなく、誰がどう見ても明白だった。この激流を歩いて渡る命知らずはいない・・・。

「仕方が無い。これはできれば避けたかったんだけど、川は渡れないから・・・山コースを選択する

「や、山コース・・・(ポン)!?」

「うん。川向いの物件に川を渡らずにたどり着くためには、迂回して山を歩いて越えるコースで行くしかないね。相当大変かもしれないけど、こだぬきさん、ついてこれる?」

―迷う余地は、無い。ここまで来てあきらめるという選択肢がありえないことは自明の理。改めて覚悟を決め、首をポンポコ縦に振る。
果たして我々は木陰に車を止め、薄暗い山道にザクザクと入って行ったポン。
道なき道、という感じなのかと思ったらそうでもなく、

しばらくはこんな平坦な道。
あたりにはこんな、

見たことないアスパラガスみたいな植物や、

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巨大なめこ。梅雨のじめじめした空気の中、それら謎の植物がにょきにょきと自生しているのを横目に歩みを進めるポン・・

―十数分?歩いたところだろうか、先方を歩くパイセンらがふいに立ち止まったポン。

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山神様じゃ・・・・・・
山神様がおられた・・・・・

神妙な面持ちで手を合わせるパイセンら。
こだぬきもそれに倣い、

「怪我なく無事にW発電所にたどり着けますように」

たぬきのフリをせず真剣に祈りを捧げた。

「よし。じゃあ、カメラとか全部しまってるね?iphoneもしまってね。つり橋を渡るから」

と笑顔でパイセンが指した方を見ると・・・

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ん?
底・・・底板、的なものは・・・?

あ・・・そういう風に渡るのか・・・

「下は見ない。両手と、足と、必ず3点はどこかにしっかりつかまるか乗っけるかして。1箇所はずれても落っこちないように」

さっそく試練が訪れたようだポン・・・。
ネットでこの川と橋は見たことがあったが、川の流れはこんなざあざあな感じではなく穏やかな感じだったと思うんだけど、これも豪雨の為せるわざか・・・。

自分の、人より短い手足に一抹の不安を覚えながら、汗かく手のひらに軍手をぎゅっと装着し、パイセンらが順々に吊り橋を渡る後姿を見守った・・・

―つづく


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