【岩手県W発電所 05】パイセン、水を・・・水を下さい・・・
date: 2014.08.01
category: 廃墟
岩手県W発電所を目指す山中。旅前におしゃれストールを身に着けようとしていた自分へ心の中で呪いの言葉を吐きつつ、汗、泥、虫除けスプレーのにおいの中、自分がどんどん野生に還っていくのを感じていたポン・・・!
▼これまでのW発電所
⇒【岩手県W発電所 01プロローグ】旅の心得
⇒【岩手県W発電所 02】命の選択
⇒【岩手県W発電所 03】底板の無い吊り橋
⇒【岩手県W発電所 04】山と戯れること山の如し
生きるということを、肌身に感じながらの狂走であった―
廃墟行のパイセンはスマートフォンのGPSと、おもむろに取り出した紙で何やらを確認しているポン。
こ、これは…等高線…!!
こんなモノ見たのはよもや小学校の時以来だポン・・・。
まさか実際にこんなモノを頼りに山道を歩く人が身近にいようとは、廃墟のプロ恐るべし・・・。
「昔はGPSとかなかったからねー。今は大分便利になったよ」
などとのたまうパイセンの頭上からは後光がさしてやまないポン。まぶしくて見えないポン。いやむしろ汗で目がかすんで見えないポン。超つかれて見えないポン。ポンポコポンポンポン・・・
急傾斜の登り降りは、お互いに一定の距離を保ちながら進む。途中、上方から
「よけろっ!!」
というパイセンの声がしたかと思うと、振り仰いだ上方から大き目の太い木の幹がゴロンゴロンと転がってくるというアクシデントなどが起きたりもしたが、距離を保っていたため免れた。
自力で登りきれないところでは、パイセンが丈夫そうな木の幹に縄を縛りつけてこちらに垂らしてくれた。
「これにつかまれ!」
とおっしゃる声を頼りに、木の根が抜けやしないかとポンポコドキドキしながらもえいやと縄に取りすがる。
・・2013年にもなって・・・齢○にもなって・・・こんな山奥で自分は一体何をやっているのだろう・・・というどうしようもない思いが一瞬頭をかすめるが、凄絶な筋力との闘いの中であっという間にそれも風化する。
どうにか難を乗り越えた際かぶっていた帽子を落とし、もう拾う気力すらなかったので
「いいです!この帽子は置いていきますポン!」
と決死の形相で叫ぶと、
「いや、帰りに絶対同じ道を通るとは限らないから拾って」
と冷静に返されたりもした。
そうして無我夢中で歩き続け、ふと顔を上げると・・・
ひとつめのポイント、巨大サージタンクが目の前に現れた・・・
道なき道を歩き、ふいに突然に現れた人工物。
すっぽり山の中に覆われ、夢の中の出来事のようだポン。
中を覗き込むと、深くて真っ暗な穴。
劣化したコンクリート。明り取りの窓から注ぐ弱弱しい光。
止まったままの時間。
疲れを忘れて、息を飲んだポン―
パイセンらは徐々にあやしい雲の立ちこめ始めた空を見上げて、これからの時間配分等について相談している。どうやら、天候の心配もあるのでここは早めに切り上げて次に進もうということのようだポン。帰りに時間があればまた寄れるからとのことで、リュックにしっかり収納されているカメラは出さず、iphoneで撮影するのみにする。とりあえず軽く一服するかと水分補給を・・・
水分・・・
補給を・・・
???
そこで、我気がつけり。
パイセン、自分、水を車においてきましたポン・・・。
パイセン「ええーーーマジか」
こだぬき「どうりで荷物、思ったより重くないなと思ったんスけど・・・はい。ポン」
とたぬきがうなだれていると、パイセンはご自分の大きなリュックサックをごそごそとやり、真新しい未開封のお茶を差し出された。
パイセン「はい・・・。これ、余分に持ってたから」
おお・・・!!!
廃墟で水をくれる人は、神よりも尊い・・・!!
パイセン「1000円」
こだぬき「・・・」
パイセン「山の上より廃墟の水の方が高いに決まってるでしょ」
・・・お布施や。これはお布施や。
「因果応報」という言葉をかみ締めながら、感謝しお茶を押し頂く。
真新しいお茶も手に入れ、一息ついたところで再出発だポン。
点々と遺構が残る道。
胸は期待で満たされ、乾いたのどはお茶で潤される・・・!
つづく―