【岩手県W発電所 03】底板の無いつり橋
date: 2014.06.12
category: 廃墟

「下は見ない。両手と、足と、必ず3点はどこかにしっかりつかまるか乗っけるかして。1箇所はずれても落っこちないように」
とアドバイスをくれた廃墟行のパイセンは、底板の無いつり橋を慎重に、そして確かな足取りで渡り終えた。こちらを振り向いたパイセンが「オッケー」の合図をよこす。
いよいよこだぬきが渡る番が回ってきたのだポン。
▼前回の投稿
⇒【秋田県W発電所 02】命の選択▼前前回の投稿
⇒【岩手県W発電所 01プロローグ】旅の心得
「こだぬき」と自称するからには、体躯の小さい小生である。ポン。
パイセンのように足をぐっと広げて橋の両側面に置いて歩いてみようと思ったが・・・
足りない・・・
足の長さが、ほんの少しだけ・・・
いや、足りるは足りるポンけど、逆にバランス取れなくて怖いポン的な状況ポンになるので仕方なしに、横渡しの骨組みの鉄骨の真ん中あたりに左足を乗せ、右足を橋の片端に、体を寄せてズリズリズリと右足を前進させて、次の横渡しの鉄骨に左足をポンッと移動させる、というやり方をとって、妖怪のようにズリズリと歩を進めたポン。
ズリズリッ・・・ポン!
ズリズリッ・・・ポン!
三途のW川の向こうから「がんばれがんばれっ!」と応援してくださるパイセンら。
もう少しで渡りきるぞっというところで、
「もう少しだからって気を抜くなっ!」
となんとも心の隙をついた冷静なアドバイスを飛ばしてくれるパイセンら。
ひりついた空気の中、どうにか橋を渡り終えたポンッ!
「よし、じゃあ行くよ」
と進路を取るパイセンらの後ろで、
(腐っても小劇場役者は体力と根性だけはあるのだ・・・ッ!)
と、張ってもしょうがない胸を張り、情熱を燃やしていたポン。
―それから再び、謎の植物の自生する山道をゆく。
うねうね、うねうね。
少しずつ、道に傾斜が生まれてくるポン。
(うむ。しかしこのくらいの傾斜であれば体力と根性だけは自信のあるこのこだぬき。どうにかやっていけそうな気がするぜポン・・・)
徐々に、徐々に、道は険しくなってゆく。
(ひいい。ひいい。ふうう。はああ。)
と何かが生まれそうな息を上げながら・・・
―パイセンが藪に飲まれていく。
―パイセン、もうそれ道じゃないッス・・・
パイセン・・・パイセーーーーーン・・・ッ!
―つづく