廃墟と無口な造形群

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【岩手県W発電所 08最終章】廃水力発電所地下空間、上階

date: 2014.12.19

category: 廃墟

ようやくたどり着いた幻の廃墟、W水力発電所跡。
ひとしきりの感動にうめいていると、それに呼応するかのようにゴロゴロ・・・ゴロゴロ・・・と空がうなり始めた。

▼これまでのW発電所
【岩手県W発電所 01プロローグ】旅の心得
【岩手県W発電所 02】命の選択
【岩手県W発電所 03】底板の無い吊り橋
【岩手県W発電所 04】山と戯れること山の如し
【岩手県W発電所 05】パイセン、水を・・・水を下さい・・・
【岩手県W発電所 06】中腹の水路
【岩手県W発電所 07】雷鳴轟く水力発電所廃墟

雨音を聞きながら、地下へと足を進めるポン・・・
少し遠ざかる雨の音。
湿り気と青々とした暗闇が地下一階を包む。

機械が設置されていたと思われる穴だポン。

かなり大きな機械だったんだろうな。
明りが差し込む頭上を見上げると

さっき上から覗き込んだ穴だポン。
どこを見ても絵になってしまう。緑が飛び込んでくるのが目にまぶしい。

電灯の形も、なんだかモダンだポンね。

続いて2階へ。
2階は大きな窓がないので薄暗いポン。バタバタバタッと音がして見上げると、頭上をこうもりが飛び去っていった。
闇に目をこらすとこうもりはたくさんいて、バタバタと大運動会しているポン。
窓の外が一瞬ピカッと光ったかと思うとすぐにゴロゴロビッシャーンと雷鳴が轟いた。
薄暗がりに差した閃光に、三脚に据えたカメラをじっと見つめるパイセンが一瞬浮かび上がってぎょっとしたが、廃墟の妖精か何かだと思い、見ないフリをしてそっと通り過ぎるポン・・・

雨と落雷と、外の緑で怪しい色に染まった窓。
割れた壁のモルタルがたくさん散らばっている。

2階から、さっきの1階が見下ろせる小さなバルコニーがあったポン、、、

上から眺める景色も格別だポン・・・ (涙)
もう、涙で目が曇ってくるポンね・・・

涙で目が・・・

目・・・


あれ・・・?


レンズ曇っとる・・・!!!

地下からあがってきた気温差と、雨の湿気とたぬきからポンポコほとばしる熱気等でレンズがしゅわしゅわと曇ってくるのである・・・ポン!

パニックに陥りながらも、いやもう拭くしかない。キュッキュキュッキュとレンズを磨きながら回るポン。。

2階の一番奥の部屋。

暗がりから妖精・・・もといパイセン雷鳴とともに現れ、
「この上からの景色が最高だよ」と目を輝かせる。

「この上」というのは、2階の更に上のことだ。奥の扉から出ると外階段、というか、さび付いたはしごがかかっているのだポン。

「カメラとか一旦しまって、登ろう」
と妖精達は準備にかかる・・・。燐粉を撒き散らしているごとくキラキラしておるポン。

たたきつける雨、鳴り響く雷、濡れてぐっしょりとした体。

―この時、どうして「行きますポン」と言えなかったのかと、今になるとすごく悔やまれる。
しかし、この時、この場所、この瞬間で、たぬきの生命力は限界であった。

「パイセン、自分は・・・自分はあきらめますポン・・・」

涙をのんで報告。
歴戦の妖精は「うん、無理はしない方がいいよ」と冷静な判断でうなずいた。

キラキラと上階へ旅立ってゆく廃墟の妖精を見送り、小獣たぬきは下界へ先に進路を取ることにしたポン。どうせ戻るときも遅れてしまうだろうから、少しでも先に歩みを進めた方がよい。途中きちんと撮り損ねたタービンも撮りたいし・・

往路と違い、自分で道を選んで歩く帰路では
「こっちの方が近そうだポンね!」と安易に選んだ道で気がつくと・・・

image54

・・・こうなっており、
(おかしい・・行きはこんな急斜面はなかった・・)
というくらいほぼ直角の崖をよじ登るはめになり
「バカは楽をしようとしてバカを見る」
というなにやら格言めいた無為な言葉を心でつぶやきつつ、必死でゴールを目指したポン。

途中、なんだか狂暴な形をした木の枝に靴紐をとられ、

(マ、マクレガーさんにパイにされる・・・!!)
とくだらない冷や汗をかいたりしながら、どうにか、こうにか、下山した。
(結局タービンにたどり着いた時は暗くなっていて写真も撮れなかった)

こうして、不肖こだぬき、初の廃墟遠征は幕を閉じたポン。
翌日、信じられないくらいの筋肉痛に襲われたけど、この日の思い出はなんていうかきっと一生胸に残ると思う。
来るものを拒むような場所で廃墟となった発電所。
訪れれば静かで、来訪者を受け入れるわけでもなくただそこにある廃墟。
その静かな空間にひたすら無言の優しさを感じた時間を忘れないポン。

廃墟行は苦労が多いし、一般的には(当たり前だが)到底褒められた趣味ではないというか「薄暗い趣味」なのかもしれないが、それでも私は廃墟に向かいたい。
だって廃墟が、廃墟がたぬきを呼んでいるんだもの・・・!

思い入れが大きかったのと、溜めに溜めて書き出してしまったせいでプロローグから完結までなんと半年も要してしまったポン。
長い間、お付き合い、ご愛読いただいた方、本当にありがとうございましポン!!

ちょこちょこと上げていた写真はこちらにまとめました。


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