廃墟と無口な造形群

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天気の話

date: 2012.09.05

category: 閑話休題

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こだぬきです。
今日、好きだった人が嫁いでいってしまいました。その人は自分とはまったく違う考えの持ち主で、いつでも対岸にいて、だけど不思議と川を隔てているはずなのにすごく近くにいるような気がして、狸はその人のことがとても好きでした。
ところがある日川が氾濫して、狸の居た岸は激しい川の水に削られ小さな小さな島になって遠く離れたところまで流されていってしまいました。

それから数年が過ぎたある夜、狸の流れ着いた新しい岸辺に深い暗い森があって、その中を小さな炎が列を成して移動していくのが見えました。懐かしい明かりです。提灯の、やさしい光です。それはかつて、狸をずっと照らしていた明かりでした。列はしめやかに進んでいき、やがて見えなくなりました。うそのような夢のような出来事でした。

翌朝狸が目を覚ますと、まっさらに晴れた青空から大粒の涙のような雨がぽたぽたぽたと降って、狸がつられて涙を流そうとしたら空はもう何事もなかったかのように、真っ青に晴れているだけなのでした。


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