廃墟と無口な造形群

BLOG

なんとかマンション

date: 2013.12.03

category: 廃墟

DSC_0225

人間は失敗から学ぶ。  こだぬき

バブル崩壊後、建設会社が倒産。建築途中の建物が完成を見ないままに放置され廃墟となった物件、というのが秘かに結構あるらしい。ポン。(詳しくはこちらをご参照あれ→廃墟ちゃんねる「バブル景気と廃墟について」)

今回はその中の、建築途中で止まってしまってから20年以上放置されているという通称Cマンションに進路を取ったポン!

Cマンションは、それなりな’町中’にトン、と置かれていた。こんな場所に20年以上も時間を止めている建物があるとはちょっと思えない感じだポン。
町の方々の目には触れてはならないので、最新の注意を払い、車でゆっくり入り口辺りに近づくと、さっと外に出て、車が去るまでの間にすっと身を潜めた。

運転手が「俺のことは置いていけ・・!」となにやらドラマチックにブロロロ・・・と走り去って行くのを涙ながらに見送ると、彼の分まで生きるため、ぎゅっとまた気合を入れ直しポンポコ建物と向かい合ったポン。

DSC_0175

DSC_0177

中に入ると、むきだしのコンクリートの部屋がひたすら続く。

使われて、取り残された廃墟と違って、なんていうか無機質で、冷たい、暗い感じ。モノの存在が際立つ。

DSC_0162-2

DSC_0192

地下にはおどろくほどこうもりがいて、ギィヤアー!ギィヤアー!と、ちょっと「大丈夫ポン?体調悪いポン?」と心配になるような悲鳴を上げている。

こうもりは超音波で闇の中でも人にぶつからない仕組みなっているというまことしやかな噂を耳にしていたので、そろそろとそこを通り抜けてみると確かにぶつからなかった。

そして地下の大きな広場に出ると、

DSC_0213-2

水が溜まって、吹き抜けの天井が映っている不思議な空間が。

決してこんな不思議な空間を作るために演出されたわけではない、工事途中でぽっかり空いた穴に、空の見える天井から雨水が降って溜まって降って溜まって。

DSC_0210

DSC_0220-2

一通り巡っていたので、ゆっくり写真を撮ったり、水鏡にぼんやりと自分を映してみたりしていると、先ほど「俺のことは置いていけ・・・!」と去っていった仲間から「どんな感じー?」と連絡がきたので、仲間と合流してCマンションを後にした。コンクリートの塊と、無口すぎる直線的な光景。廃墟にいつも感じるちょっとしたあったかさみたいなものが全然無くて、まさに「負の遺産」というか、マイナスの感情だけがしーんと移っていくような感じだった。

***
{入り口も出口も大きな失敗なく乗り越えられたと思っていた今回の探検だが、感想などを平和的に語らっている車内で、それは発覚した。}

たぬき「水が溜まっている空間が綺麗でしたポンねえ」
「ずいぶん長いこと撮ってたもんね」
たぬき「そうスポンねー。ところで、前にどこかで見た’牢獄マンション’とやらも、建設途中系の物件だポンね。あそこも行ってみたいポンねー」
「え・・・?三階行ってないの・・・?」
こだぬき「三階?ああ、なんか時間なかったし、一階二階とおんなじ感じかなと思って行かなかったスポン!」

「さ、三階にそれがあったんだよ!」

たぬき「△※○■×▼※!」

・・・そうなのだ。

今回行った通称「Cマンション」と、自分がインターネットの波の中で見かけて気になっていた通称「牢獄マンション」というところは、なんと同じ物件だったのだ。通り名の違いから別の物件だと思い込んでいた。そしてその通り名のゆえんである「牢獄」部分(三階にあったらしきむき出しの錆びた鉄骨が牢獄みたいになっているところ)がこの物件のメインの見所だったのだ。ワタシはそれを知らず・・・知らずに・・・

「これは・・・あれだね。映画館に行って予告だけ見て出てきた感じだね」
「そうですね。カレー屋さんに言ってライスしか注文しない感じですね」
電気量販店に行って米だけ買ってくる感じ
新幹線の指定席券を買って自由席に座る感じですね」
車を買ったのに免許を持ってない感じ
ディズニーの開園待ちで並んでいたのに、開園と同時におみやげ物やさんにダッシュする感じ
ネット環境が整ったのにパソコンを買い忘れた感じ
温泉旅館に行って温泉に入らない感じ
せっかく生きているのに自ら死のうとしてる感じ

・・・目の前で際限なく繰り広げられるたとえ話。
ゆっくりと暗転してゆく視界。
自分という存在に対する、圧倒的失望。水鏡にぼんやりと映っていた、自分。

人間は失敗から学ぶ。
では狸は・・・狸は何から学んだらいいのだ・・・何から・・・

頭の中の水面にさあっと風が吹いて、狸の姿が間抜けに揺らめいた。

おしまい


  • Back to Top