神奈川県水力発電所廃墟 ―サイレント・ヒル 終章―
date: 2013.09.19
category: 廃墟
(廃墟界の大先輩、楓氏と芝公園氏とともに、神奈川県の発電所廃墟へ!雨上がりの山中、空は真っ白に曇っているが幻想的な空間に古い建物がしんと聳え立つ)
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楓氏とともに、入ってきたところとは反対側から外に出た。
生い茂る緑で建物からあまり離れることはできないため、近くからぐっと見上げる。
すぐ近くに崖が迫っているので、ぐるりはできず再び中へ。芝公園氏は依然トンネルにこもったままのようで姿が見えない。
湿った屋内の植物などをじっと見つめて写真を撮っていると、後ろから
「あっ・・・!わっ・・・出たっ・・・やっぱり・・・・」
という楓氏の声が。
「ど、どうしたポンですか?」
と聞くと、
「こだぬきさん、ヒル見たことないって言ってたよね?ほら、見ておくといいよ。これ」
と言って、ご自分のカッコイイカメラをこちらに向けてくれた。
すると、カメラのモニター部分、撮影をするときに顔をぴたっとくっつける部分に、
ぴょこたん、ぴょこたん
と、謎の泥色のみみずの縮小版みたいな輩が可愛らしいような憎たらしいような動きでリズミカルに移動をしているではないか・・・・!!
「お、おおおう!こ、これが・・・ヒル・・・!!!」
とポンポコ言うのも忘れて目の前の謎の生物に釘付けになったポン!
思っていたのとは大分違うけど、こんな小さい、こんなぴょこたん野郎が大量に血を吸うのかと思うと背筋が冷えるポン。
楓氏は慣れた調子で手ごろな木の枝を拾ってカメラについた一匹のヒルをぐにいっと持ち上げると(これがなかなかの吸引力でへばりついているポン・・・)木の枝ごと窓の外にぽいっと放り投げた。
「思ったよりも小さいですポンねえ」
「そうだね。ヤマビルだね」
「ヤマビルっていうんですか!」
「雨上がりは湿気が多いからね」
「湿気が多いと出るポンね!」
「いい勉強になったね」
「ポン!」
などと教育番組的にのほほんとはじめての生きもの体験を語らい合っていたが、これは悲劇の序章であった。
「いやー。ははは。なんか一回見ると、体に付いてる気がしてなんだかムズムズするねえ」
と身の回りチェックを始めた楓氏の背中や内腿から次々にぴょこたんぴょこたんと現れたのである!!
さすがの大先輩楓氏もプチパニック。ぺらぺらこだぬきは大パニック。
一方「何?ヒル?」と外に聞いた後に目の前の暗闇で大きなゲジゲジと対面して固まるトンネルの中の芝公園氏。
「どうすりゃいんですかどうすりゃいんですか」
と無能丸出しのたぬきも最終的には素手でヒルを除去する勇気を身に付け、おそらく外観を見た時についたであろうやつらをとりあえず川で水浴びでもして禊しようと、楓氏とともに一旦発電所を離脱した。
ヒルが黒に反応するというのは聞いたことがないが、どうやら黒いTシャツを着ていた楓氏にばかり群がっていたらしく、川の浅瀬でジャブジャブ行水したこだぬきも一安心。クツでも洗うかと履いていたクロックスのニセモノを脱いで中を覗き込むと・・・
ぴったんぴったん
うようよ
ぴこたんぴこたん
と数匹のヒルが・・・
「マンションじゃねんだぞコラアアア!!!!」
と一瞬たぬき設定を忘れて激昂。
お水で流しましょうね~と心落ち着けて夏の爽やかな川の水をさらさら送り込むも、
「やつは水でも死なない!!」
と驚愕の事実に「ちくしょうヤッてやる。ポンポコ殺(ここからは早送り)
―ついに完全なる禊を済ませた。
山から出てしまい、ついてきたものを一掃してしまえばもうここはただののどかな神奈川県。夏の終わりの、涼しげな川辺である。
恐ろしいのは、完全に禊を済ませたはずであるのに、「なんか怖い。なんかいる気がする」がなかなか抜けないことで、風がさらっと体を撫でるだけで「もしや!!」とむなしく反応してしまうことだ。
川原から安全な車の置いてあるところに戻って、ペットボトルの水を飲もうとした楓先輩が、
楓先輩「うわああああ!」
たぬき「ど、どーしたんですか!?」
楓先輩「ヒ、ヒルかと思った・・・」
たぬき「な!そんな訳ないじゃないポンですか!ただの模様ポンですよ!!大体それ、車の中に置いておいたやつじゃないですか!」
楓先輩「いや、先回りされたのかと思って・・・・・・」
と訳のわからない洗脳をされてしまうのも無理はない。
なんのかんので実被害は奇跡的に免れたが、廃墟の恐ろしさを改めて思い知ったのでありました。塩水はもちろん、防虫スプレーや消毒液でも効き目はあるらしいので、今後あやしいゾーンに行く時は必携だなとメモ。
廃発電所はヒルがいることを除けば、何もない大きな空間に、ガラスのない窓の木枠に巻きついた弦とか、森閑とした空気に圧倒される素敵なところでした。
心の装備と物理装備を構えての再訪を胸に誓う・・・。
おわり